アングルという人は、なかなか性格の強い人で、講演の最中などでケー
スの顔の写真をムチで叩いて、大いに彼の抜歯論を非難したという話が伝
えられているくらいである。
今から考えればアングルの説も決して科学的
な事実によって立証されたものではなく、彼の一つの理想論であり、こう
いった旗印を高くかかげることによって、その当時のアメリカ矯正学会に
新風を吹き込んだものと考えられる。
139ページより
ここに
面白い一つのエピソードがある。
ある地方の矯正家が何年もかか
って治療を行なったが、どうしてもうまくいかない症例があった。たまた
ま
アングル先生が講演のために、その地方に行かれたさいに
その症例を先
生に診ていただき治療の指示を受けたところが、先生はこともなげに「こ
れは抜歯が必要だ」といわれた。その矯正家は気も転倒せんばかりに驚い
た。抜歯の大嫌いな先生にそういわれたので無理からぬことである。その
話はアメリカの矯正学会誌に載せられたので、つくり話ではないと思う。
このことから考えてもアングルの理論というものは、理想的な旗印として
多くの矯正家の共感をよんだものであるが、どの程度までに実際と臨床と
が結びついていたかは疑問の余地がないでもない。
140ページより